キュートな「ごっご様」に心奪われる函館の冬
冬になると函館市のスーパーの鮮魚コーナーに現れる。
売り場の一角で、不思議なオーラを纏う近寄りがたいヤツ。
気にはなるけど、一歩を踏み出せないでいた「とうちゃん」。
「布袋魚」(ホテイウオ)、通称「ごっこ」
七福神の布袋様のように太って、ゆったりした衣をまとっている姿から名付けられた。
腹側には大きな吸盤がある。
産卵期は12月から翌年の4月くらいまで。
普段は水深100メートルほどのところにいるのが浅瀬に来て産卵し、産卵後はオスメスともに死んでしまう。
現在、関東では比較的よく見かけるものとなっているのは意外な話。
産地は、北海道、青森県、岩手県。
触って張りのあるもの。柔らかいもの、白っぽくなったものは古く、新しいものは吸盤が吸い付く。
【市場魚介類図鑑】参考
人生36年、一度も食べた事が無い魚。
「第22回恵山ごっごまつり」でデビューしようと思っていたのだけど・・・。
残念ながら参加できなかったので、近所のスーパーで598円で購入してきた。
あらためて見ると、目つきが怖い。
海中で出会ったら、思わず目をそらしてしまいそうなほど、眼力がある。
その体は、今までに体験した事が無いほどの「ぷるんぷるん感」。
グロテスクな魚は美味しいと言うけれど。
重さは1.7kgの柔らかい体は、包丁では切りにくいのでハサミを使用するのが良いと思う。
丁寧に肛門からハサミを入れていくと、皮のすぐ下には内蔵がビッチリと詰まっている。
手前から肝、左が卵、右が消化器で、いずれも食べられるところ。
卵の量が半端じゃない。
タマゴを包んでいる薄い膜は、手でひっぱると簡単に取れるので外しておく。
もちろん、この卵膜だって食べられる。
体の大きさに比べて小さいのは肝だ。
この肝が残念なくらいに美味しかった。
消化器を取り出して、内蔵の処理は完了。
布袋魚とは呼べないほどに、ペッちゃんこになった「ごっこ」。
函館市にある土産店で見かけた事がある「ごっこ」の人形とは、似ても似つかない・・・しかし!
変身!!
身のヌメリや臭みを消すために、お湯に通した「ごっこ様」。
こんな可愛らしい魚、見た事が無い。
ヒレと言えばいいのかな、拳を握りしめている様な部分が特にキュート。
怖がっていた「息子」も、ようやく「ごっご様」と打ち解けた。
その後、食べやすい大きさより若干大きめにぶつ切りにした。
皮の下に詰め込まれたゼラチンっぽい何か厚さに驚いてみる。
どんな汁になっちゃうんだろう。
「ごっこ様」の柔らかいボディが煮崩れしないように、先に根菜類を煮込んでおいた。
完成する15分前に身を、5分前に肝と卵を、火を止めて自家製味噌を投入して完成!
淡白そうな身にも関わらず、結構な量のアクが出てくるので、丁寧に処理をしたいところ。
出来上がり!
プチプチした卵の食感、旨味が素晴らしい「ごっこ様汁」だ。
具にはサツマイモ、カボチャなど甘味が強い根菜を多めに入れていたため、甘めの仕上がり。
これに七味を効かせていただいた。
・・・汁は美味しいけど、肝心の「ごっこ様」にとって、もっと似合う味付けは別にある気がする。
ゼラチンの濃厚な旨味が汁の旨味を飲み込んでしまい、結局「ごっこ様」の一人勝ちになる。
次回は、酢豚っぽい「ごっこ」様やチゲ鍋っぽい「ごっご」様に挑戦してみたい。
おそらく、汁よりもこちらの方が美味しく頂けるような気がする。
最後に消化器は、内容物を取り除いてから軽く茹でる。
酢醤油で味付けをして食べてみた。
「さすがは「ごっこ」様だ・・・・」というオマケの一品だった。
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